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colors BOOKS「白熱教室」005

【21世紀に、ガンディーを考える】特別篇


白熱教室第5回は特別篇として『インド人はなぜ頭が良いのか インド式教育その強さの秘密』の著者である弘前大学・林明先生のゼミに在籍する若い学生さんたちの言葉を、そのまま紹介したいと思う。はたして、そこには過去の価値観にとらわれない新しいガンディー観がみられるのだろうか。題して「若い世代のガンディー」!

『インド人はなぜ頭が良いのか インド式教育その強さの秘密』

林明、佐藤博美・著\450・kindle版(colors BOOKS)⇒特設ページ


特別篇「若い世代のガンディー」

私のゼミでは、機会があるごとにガンディーの著書を読み、ガンディーという人間に関して考えてきた。その中で、レポートなどに寄せられた「短い言葉での印象」をまずまとめてみる。

 

有言実行、正直、意志の強さ、頑固(よく言えば、芯が強い)、多様性を体現、人の心をつかむ言葉、多くの人を惹き付ける、リーダーシップ、カリスマ、人柄のよさ、若い頃の人間臭さ、プラス志向、包容力、年齢を重ねるごとに活動的、笑顔、心で通じるとの信念で行動している、当初から偉人でなかったところ、理性を感情より優先させている

 

次に、少しまとまった文章をいくつかあげる。

 

●私が思うガンディーの魅力は真理を実践して貫いた点だと思います。口では何とでも、良いことやごまかしが言える中でガンディーは口だけの指導者ではなく、自らが非暴力や塩作りや質素な生活を心掛けていたからこそ、真理の追求ができたと思いますし、一緒の目線に立って活動していたためインドの民衆もガンディーについていこうと思えたと思います。ある程度指導者の地位に立つと欲望にかられることがあるかと思いますが、ガンディーは様々な欲望、そして己と向き合い、自分の人生の試行錯誤から真理を見つけたため、自分を見失うことなく自分らしく人間らしく生きられたのだと感じています。

 

●人間のあるべき姿を全力で追い求めていた所。大抵の人は、理想、を求めても、自分の都合の良いところの範囲でしかやらないとおもう。例えば、環境を守る事が大切だと思っていながら、平気で環境破壊を続ける。一方、ガンディーは、やれる所までやってるとおもう。不可触民の差別の撤廃のための運動、徹底的な自給自足、非暴力不服従運動など。わかっているけど、なかなか出来ない事をガンディーはやってきた。

 

●ガンディーの魅力は実践力や思想を貫き通す強い精神だと思います。普通の人がなかなか出来そうにないことを提案しても、それをきちんと実際に行動に移すことで、彼の言動に説得力・信頼性を感じ取ることが出来、指導者としての力を発揮できたのだとと思います。

 

●アメリカのシリーズドラマで「クリミナル・マインド」というとてもおもしろいものがあります。そのドラマは毎回初めと終わりに、物語に沿った格言を登場人物が言います。今までの格言のなかで、最も登場したのがガンディーです。そのなかでもシーズン2・第19話「悲しみの業火」というエピソードの締めくくりの次の格言が、私の心に刻まれています。「明日死ぬが如く生き、永遠に生きるが如く学べ」なにか(特に勉学)に行き詰まったときは、この格言を思いだして自分を奮い立たせます。

 

●私が考えるガンディーの魅力は、シンプルで、決して長くはない言葉に真理があるところです。長い言葉にも真理はありますが、それでは覚えられないし、ずっと印象に残らないと思います。簡潔で、人の心を掴む言葉を伝えることは、難しいことでしょう。それがガンディーはできるのです。

 

●ガンディーの魅力・価値について、私の個人的な意見としては、「人間としてどう生きるべきか」というこいうことに関して生涯をかけて様々な実験をし、自己に対して非常に厳しかったというところ。聖者のようでありながら、人間味があって民衆や社会に寄り添っていたところなどが魅力だと思います。比べるのが間違っているのかもしれませんが、彼の運動は現代のクーデターや革命と全く質が違うもので、より根本的レベルでの自己変革を求めるものだったと思います。

 

●私はガンディーの魅力とは、まず他人を責めるのではなく、自己を省みることから始め、自己を変えることによって問題を解決しようとする態度にあると思います。イギリス支配下のインドについて、彼はイギリスがインドを支配しているのではなく、インドがイギリスの支配を許してしまっているとしました。インドを無理矢理支配下に置いたイギリスに問題があると考えるのが通常でしょうし、まして支配されてる側の人間ならば、イギリス側を糾弾してもおかしくありません。しかし彼は相手を非難する前に、まず自分の中に至らない点を見つけることからはじめています。このように、他者を非難する前に自己の落ち度を認め、その解決を通して他者理解・相互理解へと歩み寄ろうとする姿勢は、彼ならではの魅力だと思います。

 

●まず、幼少期のガンディーは友人と一緒に肉食、喫煙、盗みをし、最初から完璧な人間ではなかったという点に魅力を感じる。また、非暴力、不服従という信念を一度も曲げることなく、どんなにひどい目に合わされても、最終目的を見失わず貫き通した姿は、素晴らしいの一言に尽きる。このガンディーの姿は、現代を生きる私たちに大切なことを示していると感じる。

 

これらのガンディーの印象は、従来のガンディーの印象と通じるものもある。

しかし、興味深いのは、ガンディーの人生と自分の人生とを重ね合わせて捉えようという点ではないだろうか。若い頃は色々悩み多くの失敗をしたガンディーが将来は飛躍することができた点にこれからの自分の可能性を見出したり、ガンディーのぶれない生き様・ガンディーの強い精神力に惹かれたり、心に響くガンディーの言葉に勇気をもらったりしていること等々。

これまでの世代は、ガンディーと言えば聖人のイメージを持ったり、非暴力思想や不服従運動といった大上段に構えたガンディーの思想や運動に注目したりして来た。これに対して、新しい世代は自分と等身大の人間としてガンディーを捉えているようである。

 


◆林明氏の著作『インド人はなぜ頭が良いのか インド式教育その強さの秘密』の特設ページはこちら